ビギナーズ・マジック
遡ること少し前
事の起こりは、十五分ほど前になる。
学園の寮に届いた手紙の日時に『ロンティーヌ』へやって来ると、準備中のプレートの下がる扉の向こうに彼がいた。
「やあ、いらっしゃい」
いつも通りの爽やかな笑顔で珠洲を迎えたシューインは、余裕を持たせて時間を指定したらしく店内で話すことになった。
「もうすぐ学園祭だね。催しものは決まった?」
「えと、まだです。喫茶がいいって意見と、魔法披露がいいって意見でクラスが真っ二つに分かれちゃって」
「ふうん。そうなんだ」
にこやかに珠洲の話を聞きながら彼はとっておきだというダージリンティのカップを二つそれぞれの手元に置いた。
「シュウさんの時はどうでした?」
「僕?あー・・・その頃は、丁度、東西大陸間で抗争が絶えなかった時期だから、ね」
「!ご、ごめんなさい」
うっかりしていた。
今でこそ、大陸間の交流が行われているけれど、ほんの数年前まではきな臭い情勢で、例え学生と言えど対敵連合の戦力として尽力せざるを得なかったはずだ。
留学に際してエデンの情報は頭に叩き込んでいたというのに、と沈む珠洲にシューインは変わらず穏やかに微笑む。
「いや、気にしないで。それより―――僕にも招待状は届くのかな?」
「!シュウさん、来られるんですか!?」
仕事でそんな暇はないと思い込んでいた珠洲は、目を大きく見開く。
「あらら。その様子だと、期待外れかな」
「い、いいえ!すぐ、招待状お持ちします!!」
席を立ちかける珠洲を引き止めて、シューインは可笑しそうに笑った。
「あとで大丈夫。―――楽しみに待ってるよ」
「は、はいい」
思い切り緩みそうになる頬を引き締めて珠洲は大きく頷いた。
鼻腔を擽るダージリンの良い香りを嗅ぎながら、カップに口をつける。彼がとっておきだと言うだけあって、深みのある味を感じた。
「おいしいです、これ」
「そう、良かった。-――君と一緒に飲みたくて、少しだけ取り寄せたんだ」
意味深に聞こえる台詞に、心臓が僅かに跳ねる。
顔を上げると、紺色の双眸はとても温かく珠洲を見つめていた。
反応に、困る。
シューインは珠洲にとって命の恩人で、行きつけのカフェレストの店長で、憧れの男性だ。
けれど、彼が珠洲に構うのには訳がある。
それは――――。
「?珠洲、それはなに?」
ふいにシューインは珠洲の鞄から覗くものに目を留めた。
「え・・・ああ、これですか?」
ショルダーの鞄を開き、封筒を取り出した。
「実はわたしの靴箱に入れられてたんですけど、急いでたからとりあえず鞄の中にいれて来ちゃったんです」
笑顔のまま、シューインは少し沈黙した。
「学園祭前だし、お誘いの手紙かな」
彼の言葉を口の中で反芻したあと、珠洲は慌てて頭を振る。
「そ、そんなんじゃないですよ。きっとまた、マホは去れとか中傷文的な・・・」
ふと彼の眉が顰められるのを見て珠洲は口元を押さえる。
「なに、それ?まだそんな人間がいるの?」
「えっと、あは。前に比べれば、少なくなってます。最近は珍しいくらいで・・・」
失言だったと、ごまかし笑いを浮かべる。
マホ人とはエデンの東大陸よりも東にある極東の島の種族。小国でありながら一時は南大陸と東大陸の大半を支配化に置いた軍事国家。現在は敗戦し、その民の多くは世界に散ったという。その特徴は黒髪黒眼。傾向的に年齢より幼く見える容姿をしている。低めの鼻、肌色は黄がかっているらしい。
黒髪・童顔・小柄、とマホ人の特徴に似通っている珠洲は、マホ人に怨み持つ種族やイルティカ純血統主義派の標的にされることがある。
シューインとの出会いも、そういった人間に襲われた時の事だった。
彼に知られるとまた心配を掛けてしまうから言わないようにしていたのだけれど・・・。
「それ、貸して」
「え、や、駄目です」
伸びてきた手から逃れるように身を捩る。
「珠洲」
咎めるように彼が紺色の目でじっと見てくる。
自分を貶す内容の手紙なんて見られたくない。
「~~~駄目ですってば、ま、万が一ラブレターだったらどうするんですか」
それは絶対無いと思いながらそう言ってみる。
シューインの目にすっとひんやりとした何かが浮かび上がる。
「―――そう。じゃあ、見せて?」
「え、えええ!?」
珠洲は驚いた。普段のシューインなら、困ったように笑って『それじゃ、見ちゃ悪いね』と言いそうなのに、と。
椅子に座ったまま、珠洲の方に身を寄せてくるシューインから更に反った彼女の身体は、バランスを崩した。
「ぬわっ」
「!」
奇声を上げた彼女の腕をとっさに掴んで力強く引っ張るシューイン。
ほっと心臓を宥める珠洲の手から、引き抜かれる封筒。
「あっ!」
青い封筒を開けようとするシューインは眉を顰めた。
「?」
「シュウさん?」
「魔法が掛かってる・・・」
不穏なものを感じて二人は沈黙する。
「・・・へ、変なもの見せちゃってごめんなさい!大丈-夫。これはわたしが処分しますから」
「僕が解除してからの方がいい。開いたとたんに何かあったら大変だから」
「や、だから、大丈夫ですってば。わたしだって解除魔法の一つくらい出来ますもん」
彼の手から封筒を取り戻し、珠洲は目を閉じ、左の人差し指と中指をこすり合わせた。緑の光が粒状に爆ぜ、硬質な音が、カチンとたつ。
「・・・何も起きない・・・」
無事に解除できた様子に、シューインが小さく呟く。
過去の失敗が彼にそう言わせたのだが、珠洲は少し凹んだ。魔法に関して彼から信用されていないのが分った。
「・・・わたしだって、成長してるんですからね」
ぶつぶつ呟きながら、封筒の口を開けた瞬間、ばちっと青白い電撃が走り、とっさにシールド魔法を使おうとして魔力が変に歪んだのを感じた。しまった、と思うと同時にシューインの身が庇うように被さり視界の端で、彼の手がシールドを張るのが見えた。
電撃は光の盾に阻まれて打ち消され、強い光に硬く目を閉じていた珠洲はおずおずと目を開いた。
揺れるランプの明かりの中で、ぶすっと仏頂面になって珠洲の前に居たのは、憧れの青年ではなく―――。
「う・・・嘘」
七、八歳ほどの小さな少年。
「・・・ぅおい」
子供の高い声をめい一杯低めて彼は、珠洲を睨みつける。
「ひぃっ」
茶色のさらさらとした髪も紺色の瞳も、着てる衣装も、シューインそのもの。けれど、どう見てもお子様。
「嘘、じゃないだろ。自分の所業のクセに」
きりきりと鋭くなる双眸に、知らず目尻に涙が滲む。
「ご、ごめ」
「これの、ど・こ・が成長してるって?」
「うゔ・・・すいませ」
「謝るより、自分の行動を省みろ。おれ前にも言ったよなぁ?進んでトラブルに突っ込むなって。お前のその頭はお飾りなのか!?」
「ひ、ひどっ」
さっきまでにこにこと珠洲の話を聞いていた青年とは思えない口の悪さだ。そう―――この少年は、紛うことなくシューイン本人なのだ。
エデンに来たばかりで、自身が帯びた魔力を扱いかねる珠洲の所為で彼は以前にもこの姿になっている。
「信じられねえ・・・本当に。ボケ珠洲!おまえの所為で、おれの貴重な時間が台無しだ!!」
目を吊り上げて容赦なく糾弾する彼が、珠洲は大の苦手だった。
何せ幼い頃の暗黒時代の象徴とも言うべき少年なのだから。
地球とエデンの時間の流れは全く違う。
シューインは元々珠洲と同じ歳の少年だった。それが、育ての親にエデンへ連れられて行き、エデン時間で十五年を過ごした。それは地球で九年の歳月であり、彼と彼女の間には七つの歳の差がうまれたのである。
出会った時、それが恐怖のいじめっ子との再会だなどとは夢にも思わなかった珠洲である。何せ、理想の男性像そのものの青年が、危うい所を助け出してくれて、親切にも学園に事情を話して東大陸からこの西大陸に転入することで決着がついたのだ。彼に感謝こそすれ、あの少年と重ね合わせることなど想像もつかなかった。
いつでも不機嫌そうに寄せられた眉、瞳には憎々しげな感情を宿し、引き結ばされた唇が開けば、それは珠洲への罵倒の時だった。記憶の中の少年は、顔立ちこそ整っていたけれど、それだけに珠洲は怖くて直視などそう出来なかったのだ。
(詐欺だよ、本当。この子が成長したら、あんなに素敵になるんだよ!?)
落涙の態で、珠洲は安定しない己の魔法の腕を呪う。
初めてシューインがこの少年姿になった時、息が止まりそうになった。睨みあげてくる視線を感じた時、石化する自身を感じたものだ。
魔法を解除し、元に戻ったシューインは怯えたように物影から涙目で見つめる珠洲に弱ったように笑いかけた。
『ごめんね、驚かせて。―――そう。僕ときみは地球で会ってる。同じ歳の子供として』
穏やかな声と眼差しは少年時とは天と地の差がある。
散々罵倒されて激しく凹んだというのに、その相手であるシューインに微笑みかけられると見えない尻尾が生えてぱたぱたと振ってしまうのである。
しかし、珠洲は決してМなのではない。
青年のシューインに対してだけそうなってしまうのだ。
学園の寮に届いた手紙の日時に『ロンティーヌ』へやって来ると、準備中のプレートの下がる扉の向こうに彼がいた。
「やあ、いらっしゃい」
いつも通りの爽やかな笑顔で珠洲を迎えたシューインは、余裕を持たせて時間を指定したらしく店内で話すことになった。
「もうすぐ学園祭だね。催しものは決まった?」
「えと、まだです。喫茶がいいって意見と、魔法披露がいいって意見でクラスが真っ二つに分かれちゃって」
「ふうん。そうなんだ」
にこやかに珠洲の話を聞きながら彼はとっておきだというダージリンティのカップを二つそれぞれの手元に置いた。
「シュウさんの時はどうでした?」
「僕?あー・・・その頃は、丁度、東西大陸間で抗争が絶えなかった時期だから、ね」
「!ご、ごめんなさい」
うっかりしていた。
今でこそ、大陸間の交流が行われているけれど、ほんの数年前まではきな臭い情勢で、例え学生と言えど対敵連合の戦力として尽力せざるを得なかったはずだ。
留学に際してエデンの情報は頭に叩き込んでいたというのに、と沈む珠洲にシューインは変わらず穏やかに微笑む。
「いや、気にしないで。それより―――僕にも招待状は届くのかな?」
「!シュウさん、来られるんですか!?」
仕事でそんな暇はないと思い込んでいた珠洲は、目を大きく見開く。
「あらら。その様子だと、期待外れかな」
「い、いいえ!すぐ、招待状お持ちします!!」
席を立ちかける珠洲を引き止めて、シューインは可笑しそうに笑った。
「あとで大丈夫。―――楽しみに待ってるよ」
「は、はいい」
思い切り緩みそうになる頬を引き締めて珠洲は大きく頷いた。
鼻腔を擽るダージリンの良い香りを嗅ぎながら、カップに口をつける。彼がとっておきだと言うだけあって、深みのある味を感じた。
「おいしいです、これ」
「そう、良かった。-――君と一緒に飲みたくて、少しだけ取り寄せたんだ」
意味深に聞こえる台詞に、心臓が僅かに跳ねる。
顔を上げると、紺色の双眸はとても温かく珠洲を見つめていた。
反応に、困る。
シューインは珠洲にとって命の恩人で、行きつけのカフェレストの店長で、憧れの男性だ。
けれど、彼が珠洲に構うのには訳がある。
それは――――。
「?珠洲、それはなに?」
ふいにシューインは珠洲の鞄から覗くものに目を留めた。
「え・・・ああ、これですか?」
ショルダーの鞄を開き、封筒を取り出した。
「実はわたしの靴箱に入れられてたんですけど、急いでたからとりあえず鞄の中にいれて来ちゃったんです」
笑顔のまま、シューインは少し沈黙した。
「学園祭前だし、お誘いの手紙かな」
彼の言葉を口の中で反芻したあと、珠洲は慌てて頭を振る。
「そ、そんなんじゃないですよ。きっとまた、マホは去れとか中傷文的な・・・」
ふと彼の眉が顰められるのを見て珠洲は口元を押さえる。
「なに、それ?まだそんな人間がいるの?」
「えっと、あは。前に比べれば、少なくなってます。最近は珍しいくらいで・・・」
失言だったと、ごまかし笑いを浮かべる。
マホ人とはエデンの東大陸よりも東にある極東の島の種族。小国でありながら一時は南大陸と東大陸の大半を支配化に置いた軍事国家。現在は敗戦し、その民の多くは世界に散ったという。その特徴は黒髪黒眼。傾向的に年齢より幼く見える容姿をしている。低めの鼻、肌色は黄がかっているらしい。
黒髪・童顔・小柄、とマホ人の特徴に似通っている珠洲は、マホ人に怨み持つ種族やイルティカ純血統主義派の標的にされることがある。
シューインとの出会いも、そういった人間に襲われた時の事だった。
彼に知られるとまた心配を掛けてしまうから言わないようにしていたのだけれど・・・。
「それ、貸して」
「え、や、駄目です」
伸びてきた手から逃れるように身を捩る。
「珠洲」
咎めるように彼が紺色の目でじっと見てくる。
自分を貶す内容の手紙なんて見られたくない。
「~~~駄目ですってば、ま、万が一ラブレターだったらどうするんですか」
それは絶対無いと思いながらそう言ってみる。
シューインの目にすっとひんやりとした何かが浮かび上がる。
「―――そう。じゃあ、見せて?」
「え、えええ!?」
珠洲は驚いた。普段のシューインなら、困ったように笑って『それじゃ、見ちゃ悪いね』と言いそうなのに、と。
椅子に座ったまま、珠洲の方に身を寄せてくるシューインから更に反った彼女の身体は、バランスを崩した。
「ぬわっ」
「!」
奇声を上げた彼女の腕をとっさに掴んで力強く引っ張るシューイン。
ほっと心臓を宥める珠洲の手から、引き抜かれる封筒。
「あっ!」
青い封筒を開けようとするシューインは眉を顰めた。
「?」
「シュウさん?」
「魔法が掛かってる・・・」
不穏なものを感じて二人は沈黙する。
「・・・へ、変なもの見せちゃってごめんなさい!大丈-夫。これはわたしが処分しますから」
「僕が解除してからの方がいい。開いたとたんに何かあったら大変だから」
「や、だから、大丈夫ですってば。わたしだって解除魔法の一つくらい出来ますもん」
彼の手から封筒を取り戻し、珠洲は目を閉じ、左の人差し指と中指をこすり合わせた。緑の光が粒状に爆ぜ、硬質な音が、カチンとたつ。
「・・・何も起きない・・・」
無事に解除できた様子に、シューインが小さく呟く。
過去の失敗が彼にそう言わせたのだが、珠洲は少し凹んだ。魔法に関して彼から信用されていないのが分った。
「・・・わたしだって、成長してるんですからね」
ぶつぶつ呟きながら、封筒の口を開けた瞬間、ばちっと青白い電撃が走り、とっさにシールド魔法を使おうとして魔力が変に歪んだのを感じた。しまった、と思うと同時にシューインの身が庇うように被さり視界の端で、彼の手がシールドを張るのが見えた。
電撃は光の盾に阻まれて打ち消され、強い光に硬く目を閉じていた珠洲はおずおずと目を開いた。
揺れるランプの明かりの中で、ぶすっと仏頂面になって珠洲の前に居たのは、憧れの青年ではなく―――。
「う・・・嘘」
七、八歳ほどの小さな少年。
「・・・ぅおい」
子供の高い声をめい一杯低めて彼は、珠洲を睨みつける。
「ひぃっ」
茶色のさらさらとした髪も紺色の瞳も、着てる衣装も、シューインそのもの。けれど、どう見てもお子様。
「嘘、じゃないだろ。自分の所業のクセに」
きりきりと鋭くなる双眸に、知らず目尻に涙が滲む。
「ご、ごめ」
「これの、ど・こ・が成長してるって?」
「うゔ・・・すいませ」
「謝るより、自分の行動を省みろ。おれ前にも言ったよなぁ?進んでトラブルに突っ込むなって。お前のその頭はお飾りなのか!?」
「ひ、ひどっ」
さっきまでにこにこと珠洲の話を聞いていた青年とは思えない口の悪さだ。そう―――この少年は、紛うことなくシューイン本人なのだ。
エデンに来たばかりで、自身が帯びた魔力を扱いかねる珠洲の所為で彼は以前にもこの姿になっている。
「信じられねえ・・・本当に。ボケ珠洲!おまえの所為で、おれの貴重な時間が台無しだ!!」
目を吊り上げて容赦なく糾弾する彼が、珠洲は大の苦手だった。
何せ幼い頃の暗黒時代の象徴とも言うべき少年なのだから。
地球とエデンの時間の流れは全く違う。
シューインは元々珠洲と同じ歳の少年だった。それが、育ての親にエデンへ連れられて行き、エデン時間で十五年を過ごした。それは地球で九年の歳月であり、彼と彼女の間には七つの歳の差がうまれたのである。
出会った時、それが恐怖のいじめっ子との再会だなどとは夢にも思わなかった珠洲である。何せ、理想の男性像そのものの青年が、危うい所を助け出してくれて、親切にも学園に事情を話して東大陸からこの西大陸に転入することで決着がついたのだ。彼に感謝こそすれ、あの少年と重ね合わせることなど想像もつかなかった。
いつでも不機嫌そうに寄せられた眉、瞳には憎々しげな感情を宿し、引き結ばされた唇が開けば、それは珠洲への罵倒の時だった。記憶の中の少年は、顔立ちこそ整っていたけれど、それだけに珠洲は怖くて直視などそう出来なかったのだ。
(詐欺だよ、本当。この子が成長したら、あんなに素敵になるんだよ!?)
落涙の態で、珠洲は安定しない己の魔法の腕を呪う。
初めてシューインがこの少年姿になった時、息が止まりそうになった。睨みあげてくる視線を感じた時、石化する自身を感じたものだ。
魔法を解除し、元に戻ったシューインは怯えたように物影から涙目で見つめる珠洲に弱ったように笑いかけた。
『ごめんね、驚かせて。―――そう。僕ときみは地球で会ってる。同じ歳の子供として』
穏やかな声と眼差しは少年時とは天と地の差がある。
散々罵倒されて激しく凹んだというのに、その相手であるシューインに微笑みかけられると見えない尻尾が生えてぱたぱたと振ってしまうのである。
しかし、珠洲は決してМなのではない。
青年のシューインに対してだけそうなってしまうのだ。