あの頃の私は知らない。
園田くんが、思ってもみなかったものを背負っていた。
「それはまさかと思うけど、……ギター?」
「うん、ギター!」
えーっと、うん。ちょっと落ち着こう。
予想外の展開に頭が付いていかない。ひとまず深呼吸をして、とりあえず音楽室の中に入り、適当な場所に座った。
そしてもう一度深呼吸。園田くんは私の隣に腰を下ろした。
「あの、音楽教えてって、もしかしてその、ギター?」
恐る恐る尋ねる。
「そう! 近所の兄ちゃんがくれたんだ」
何ということだろう、と思わず頭を抱えてしまった。そんな私を心配そうに園田くんは覗き込む。
「どうした? 頭痛い?」
「だ、大丈夫……だけど私やっぱり教えられないよ」
「え? なんで?」
不思議そうに園田くんは首を傾げる。顔を覗き込まれていたものだから、思った以上に近くに園田くんの顔があって、思わずぱっと目を逸らした。
「む、無理だよ。だって私、ギター弾いたことないもの」
ぼそぼそとそう言えば、一瞬しんと二人の間に沈黙が流れた。