あの頃の私は知らない。
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「いらっしゃいま……」
「抹茶ラテのホットひとつください」
お客さんのピークが一旦引いた土曜日の夕方。レジの画面右下には16:52の文字。
なんか目立つ人が入って来たなと思えば、それは園田くんだった。
ぽかんと一瞬の間があって、慌てて我に返りレジに打ち込む。
「お会計390円でございます」
「宇佐美、今日バイト何時まで?」
「110円のお返しとレシートでございます、少々お待ちくださ……はい?」
「バイト。何時までなの」
きらきらした瞳と目が合った。あの頃と同じその瞳から目を逸らせなくて、ラストまで、と呟く。
「そっか」
「う、うん」
「抹茶ラテのホットでお待ちのお客様、お待たせいたしました」