あの頃の私は知らない。
「宇佐美、選曲……」
余韻に浸っていると園田くんが今にも笑い出しそうに、口を開く。
「だ、だってね、知ってる曲のほうがいいかなって思ったの!」
「いや、だからってそこで普通、ふるさと選ばないって!」
「いいじゃん、ふるさと! うさぎおいしかのやま!」
そう言い返すと、園田くんは堪え切れなくなったように笑い出した。
適当でいいって言ったの園田くんなのに、と膨れると笑いながら、ごめんごめん、と平謝りされた。
「笑ってるけど、園田くんだってひどかったからね! あれただのコード練習だよ、私弾かなくても良かったよ!」
「それは正直申し訳なかった」
「あ、えっと、はい、精進してください」
「はは、うん、了解しました」
一頻り笑い終えた園田くんは、そう言って私のほうを向いた。