あの頃の私は知らない。
綺麗な青空を背負っていた








同じクラスの園田くんは、いつも人の中心にいるような人だった。



「俺に音楽、教えてよ」


放課後の閑散とした自転車置き場。他の生徒はみんな部活動を始める準備をしている。

にっと浮かべた笑顔は人懐こく、綺麗な青空がよく似合った。

その笑顔があまりにも純粋だったから、一瞬何を言われたのか理解できなかった。


「……え?」

「バンドって格好いいなって思って」

「あ、うん」

「それだったら宇佐美に教えてもらおうって思って」

「突拍子もないね……」


どうしてそこで急に私に繋がったんだろう。そんなに話したこともないのに。

疑問は浮かんだけれど、それを口にする勇気もなくて、ただ相槌を打つ。


「合唱コンクールで伴奏してるし、宇佐美なら教えるの上手そうだなって」


私の頭の中を読んだように園田くんはそう続ける。なるほど、と頷けば笑顔が返ってくる。

その笑顔にどう反応していいか分からず、私は少し視線を外して、でも、と口を開いた。




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