あの頃の私は知らない。
「でも私、教えたこと無いよ。上手に教えられるかどうか分からないし……」
「俺より上手いから大丈夫! それより時間と場所をどうするかだなー。どっかいいところある?」
「え? いや、あの……」
「あ、音楽室はどう? 何時なら使えるんだろ」
「うーんと、放課後は吹奏楽部が使うし、朝練も7時半から使ってるから、えっと」
「よし分かった!」
急に園田くんはそう言って、手をぽんと叩いた。
え、え? 分かったって何が?
「明日の6時半、音楽室集合な!」
じゃあ、と手を挙げて去っていく園田くんに、呆気にとられたまま手を振る。
理解が追い付かず、一人残された自転車置き場でぽかんと口を開けたまま突っ立っていた。
何だかとても大変なことに巻き込まれたと気付いたのは、家に帰ってからのことだった。