あの頃の私は知らない。
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目の前にいる男の人は、あの頃の彼より背が伸びて、声も一段低くなって、まるで違う人のように思えた。
ぎゅっと両手を握る。心臓の音が耳元で聞こえるようだった。
13歳のとき以来会っていなかったわけだから、7年振り。
そう思えば、彼も私も変わっているのは当たり前のことだ。
「ひ、久しぶり……」
ぼうっとしたまま、蚊の鳴くような声で言う。彼の後ろで高校生が店から出ていくのが見えて、ありがとうございました、と慌てて声を張った。
私たち以外いなくなった店内に、沈黙が流れる。
どうしよう、何を言ったらいいんだろう。
急に心が落ち着かなくなって、頭が混乱していた。
そんな私とは対照的に、目の前の彼はゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「元気?」
聞きなれないその低い声。返事をしようにも、あわあわしすぎていて上手く声が出ず、結局こくりと頷いた。
「東京にいたんだ」
少し小さく呟いた彼は、そっと視線を落とした。私はまた頷く。