いと、ゆかし
どうか、
「おぉー、さむー」
赤い長財布を脇にはさんで、手の中でホットココアの缶を転がす。
こんな寒い日でも、彼はいるんだろうか。
いつもの角を曲がる。
見えてきた公園のすべり台のてっぺんに、ぽつんと体育座りしている彼がいた。
それだけで、嬉しい。
「せんぱい」
「……」
黒目がちの大きな瞳は、今日も遠くを見つめている。
「あっくん先輩」
「……」
もう一度呼べば、ちらり。
その大きな瞳が揺れる。
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