いと、ゆかし
先輩の穏やかな雰囲気も。
くまのキャラクターのポシェットも。
歪んだ口も。
呂律のまわってない話し方も。
ココアを見せると嬉しそうに笑うのも。
私の言葉をオウム返しするのも。
全部、全部、大好きで。
いつも遠くを見つめてるような、黒目がちで大きな瞳が、たまに私を見てくれると、それだけで嬉しい。
こんな気持ちだけじゃ、駄目なんだろうか。
これから先、ずっと先輩と一緒にいたいと思うことは、軽率だとでも言われるんだろうか。
「ちょっと、美智、手洗いなさいよー」
お母さんの声が聞こえる。
振り向くと、エプロンをつけたお母さんが、ドアを開けて立っていた。
「って、そんな泣きそうな顔して、何調べて……?」
「なんでもない」