いと、ゆかし
今日も、
「先輩」
ホットココアの缶をちらつかせると、また嬉しそうに手を伸ばす。
なんか、私、貢いでるみたいだな。
そんなことをふと思い、苦笑しながらココアを渡す。
楽しそうにプルタブに指をかけた先輩を見ていると、ふと先輩は顔を上げた。
なんだろう、と思って、首を傾げると
「ありがと」
口を歪めながらそう言った。
低く響くその声に、ぐわっと心が支配される。
「……え」
「……」
「先輩、今なんて」
「……うま」
じわり、視界が滲んだ。