いと、ゆかし
声の主を探すかのように、きょろきょろと動く黒目。
それを見て私は、自分がすべり台の下にいることに気づいた。
「そっかそっか」
呟きながら、タンタンと階段を上る。
「あっくん先輩」
顔を覗き込むようにして、また呼べば、ちらり。
彼の瞳が私を見つけた。
「……あ」
「こんにちは、今日も寒いですね」
そう言って、ホットココアの缶をちらつかせる。
すると、先輩はすぐに、ぱあっと顔を輝かせた。
「ここあ」
呟いたその声は、低くて。
ぎゅっと、私は目を瞑る。