いと、ゆかし
「あら、あっくん回ってるのね」
何でもない、というように、いまだくるくる回り続けている先輩を見ながら、穏やかに言う。
「目回らないんですかね」
「うーん、見てる限り回らないみたいだけどね」
「そうなんですか」
ふわりと笑って、私と同じように砂場のふちに腰掛けた先輩のお母さん。
「あっくんの目で、世界を見てみたいわ」
吐息のように、空気にすべり、紛れたその言葉。
「私も、です」
小さく頷きながら、橙色を背景に回り続ける先輩を見つめた。