いと、ゆかし
笑ってて
今日も私は、脇に赤い長財布を挟んで、ホットココアの缶を手の中で転がす。
いつもの角を曲がる。
見えてきた公園のすべり台のてっぺんに、ぽつんと体育座りした先輩の姿を見つけると、足が進む。
「せんぱーいっ」
自然と弾んだ声で先輩を呼ぶと、きょろきょろ動く黒目。
それに微笑みながら、すべり台の階段を上る。
「こんにちは、今日も寒いですね」
ココアの缶をちらつかせ、顔を覗き込むと、心なしかその瞳は細められた。