いと、ゆかし





すると先輩は、何を思ったのか、くまのキャラクターのポシェットを開けた。

その中から出てきたのは、大量の飴。

両手でそれを私に押し付けてくる。

これは、泣き止まそうとしてくれているのだろうか。


「ふぅー……っ、せんぱいぃー……っ!」


でも、涙は止まることを知らない。

受け取らない私を変に思ったのか、先輩はポシェットをひっくり返した。

そして、その全部を掴んで、私の手に握らせる。




違うのに。

違うけど。





泣き止まそうと必死に考えてくれたその行動が、愛しくて。

不器用すぎる優しさに、また視界は歪む。




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