いと、ゆかし
これ以上心配をかけてはいけないと、ぐいっと手の甲で目元を拭った。
押し付けられた飴を、両手で握りながら、先輩の黒目がちな大きな瞳を見据える。
「先輩、大好きです……っ」
へたくそな笑みを浮かべてそう言えば。
「みっちー」
ふわり、楽しそうに、嬉しそうに笑って、また私の名前を呼ぶから。
また一粒落ちた涙を知らんぷりして、私も先輩に笑顔を見せる。
橙色に染まった公園。
飲みかけのココア。
くまのキャラクターのポシェット。
歪んだ口。
呂律のまわってない話し方。
オウム返し。
いつもどこか遠くを見ている黒目がちな大きな瞳。