いと、ゆかし
「先輩、ココア好きですもんねー」
「ん」
ちょうだい、というように手を伸ばしてくる先輩に、苦笑いを浮かべる。
「私が買ってきたのにー」
口を尖らせながらも、はい、と渡す。
すると先輩は、本当に嬉しそうに笑って、プルタブに指をかけた。
その笑顔が見たくて、私は毎日、ホットココアを買う。
「うま」
先輩は両手で缶を持ちながら、自分の唇をぺろっと舐める。
その仕草が、優美で。
つい、かあっと頬が赤くなる。
「先輩かっこいいです……」
「うま」
私が何を言おうとも、先輩はココアに夢中だ。