いと、ゆかし
今日も先輩は、首にくまのキャラクターのポシェットを提げている。
冬だというのに、パーカーにジーパンという、いたってラフな格好。
私なんて、マフラーぐるぐるなのにな。
そう思いながら、ぼうっと見つめていると、
「ん」
「あ、はぁい」
もういらないのか、ココアの缶を私に渡してきた。
それを受け取り、飲もうとするものの、……やっぱりちょっと恥ずかしい。
でも、これほどのチャンスはないから、ちょびっと口を付けてみた。
それだけで頬を染める私を気にする素振りはなく、先輩はまた遠くを見つめている。
「先輩」
「……」
ちゃんと、目を合わせて呼べば、小さく先輩は反応する。