いと、ゆかし
「私の名前、分かりますか」
「……ちー」
「うーん、惜しい。みっちーですよ」
「みっちー」
そうです、と頷けば、先輩はまた
「みっちー」
と呟いた。
あまり口の左端が開いていないから、歪んだように動く唇。
ちょっとまわってない呂律。
それさえも、大好き。
「先輩」
「先輩」
「彼女いるんですかー」
「彼女いるんですかー」
先輩は私が言ったことを、繰り返して、満足そうに笑う。
いたずらっこのような笑顔が、輝いて見えて仕方がない。