いと、ゆかし
「ん」
そう言って、こぎ始める先輩。
なるほど、今日はブランコしようってことですか。
ひとり、心の中で頷きながら、ココアの缶をその辺に置いて、私も少し足を動かしてみる。
「ほら、帰るわよー」
「えー」
夕暮れ時だからか、母親に連れられて帰っていく子どもたちは、ブランコをこぐ私たちを羨ましそうに見ていく。
キーコキーコ、公園に響くのは私と先輩のブランコの音。
橙色に染まった公園は、寂しい感じがするけど、どこか穏やかな気持ちになるのは先輩の雰囲気が優しいからだろうか。
「せんぱい」
「……」
「楽しいですね、先輩」
「……」
目を見てないと、返事がこないのは分かってるけど。
でも、話しかけていたいと思う。