いと、ゆかし




先輩が私のことを覚えてくれているかどうかなんて、分からない。

だから、私にできるのは、こうやって一緒に遊ぶこと。

ひたすらおしゃべりをすること。

先輩が何か不思議な行動を始めても、それを見守ってみること。



「先輩」

「……」

「夕日、綺麗ですね」


そう言って、ちらっと隣のブランコを見ると、少し目を細めた先輩がいた。

ちゃんと、伝わってるのかな。


ぼんやり思っていると


「あっくん」


声が聞こえた。

ブランコを止めて、その方を見れば、先輩のお母さんがいた。


「こんにちは」

「こんにちは、美智ちゃん。今日も遊んでくれたのね」


ありがとう、と微笑むその人は、すごく穏やかで優しくて。

先輩と同じ雰囲気がする。




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