まるでペットのような彼
奈央子と、オフィス街の路地に入ったとこにある隠れ家的なレストランでランチをとる。

会社の人と離れていたいときに利用するお店だ。



「奈央子。なんか話しでもあるの?」

ここに連れてこられたからには、会社で聞かれたくない話しがあるんだろう。


「ん…まぁね…」


なんだか、歯切れが悪い。

「なんか言いずらいことなのね。」


いつものランチAセットを注文して、奈央子に向き直る。

「悪いんだけど…明日、郁美のとこに泊めてもらえないかな?」

「ふぇっ?」

「なに変な声を出してるのよ。キャリアウーマンスタイルが泣くわよ。」

だって、泊めるなんてできないもん。
奈央子に悠のこと話してないし…

「ねぇ、ダメかな?」


「なんで?」


ランチを口にしながら理由を聞いてみる。

奈央子には、一緒に暮らしている年上の彼氏がいる。

その彼氏の親ごさんが上京してくるらしい。
同棲していることを秘密にしている彼氏は、奈央子に一晩だけどこかに行くよう懇願したらしい。

「…これを期に、親御さんに挨拶しちゃえば?」

「う~ん…私も考えたんだけどね…
だけど、お互いまだ結婚したくないし、もう少しこのままでいたいっていうか…」

奈央子の言うことも、わかる。

この年齢になると、すぐに結婚しろなんて言われかねない。
お互いフリーなままのが、気楽だもんね。

彼氏の年齢を考えても、親御さんがすぐ結婚に結びつけるだろうことは、容易に想像できる。

ただでさえ、孫が見れないのかと言われてるらしいから…



だけど…
奈央子と彼氏って、1年くらい同棲してるんだっけかな。



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