まるでペットのような彼
悠の告白に唖然として言葉を失ってしまう。

プロポーズだけでも信じられないのに…


「だからって、卑怯な手を使おうとしたのには、違いないから、謝っておく。
郁美が仕事を続けたいんなら、それでもよいし、卒業したらバイトを辞めるつもりだから、子どもができても一緒に面倒みることもできるよ。
で、卒業したら郁美の親御さんに挨拶に行きたい。」

「···」

なんと返事したらよいのかわからない。
だって、結婚…子ども…
考えてもみなかったことだ…
悠のことは、好きだから正直、嬉しく思える面もある。


「急なことで驚かせちゃった?けど子どもできてると思うから、止まってられないんだよね。
俺、同棲なんかしたの初めてなんだけど、いい加減な気持ちで手をだしたりしないから。
郁美だから、一緒になりたい。これからも俺と一緒にいてほしいと思ったんだ。郁美とだから、子どももほしいんだよ。
大学じゃ、起業してることわかられてるからか、やたらと女が寄ってきたりするんだけど…」

私は、マユさんのことを思い浮かべた。
悠のこの外見なら起業なんかしてなくても、モテて当たり前だろうと思う。


「そうやって、寄ってくる女は、起業家の夫人になりたいってのが見え見えなんだ。俺が一緒になりたいのは、パートナーになれる相手。見た目や年齢でなく俺のこれからを支えてくれる相手を求めてた。
そんなときに郁美に出会ったんだ。
正直、きっかけは、情の脆さに付け込んだ同棲なんだけど…一緒に暮らしてるうちに、郁美しかいないと思えたんだ。普段の郁美からは、仕事で役職に付いてるなんて思えないほど隙だらけで…
だけど、仕事での片鱗もうかがえた。
だいたい…いままでの女だったら、年齢関係なく俺が横にいるだけで誘惑してきたんだけど、郁美は、そんなことしてこなかった。むしろ俺のがその気になって、我慢するのがやっとだったりしたんだ。」


私は、郁美の言葉を黙って聞いてるしかできなかった。






< 79 / 137 >

この作品をシェア

pagetop