まるでペットのような彼
「郁美が拒まなかったから一緒に寝て、それがいつの間にか心地よくて手放したくなくなっていた。
郁美が外泊したときは、妬いたんだ。つい自分を抑えられなくなっていた。
いままでの自分からじゃ、信じられないんだけどね。
仕事柄どんなに女から誘惑されようと誘惑に負けたり、女にのめり込んだりすることがなかった。
相手に不自由してなかったから、それなりに後腐れない関係しか付き合ってなかったりしたんだ。
それが、郁美を抱いたらあり得ないくらいハマってる自分に気がついて、猿だよな。」
そう言って、悠がハハハハと笑ってる。

「大学の仲間なんかに、彼女と離れていられないなんて聞いたことあったけど…
実感しちゃったよ。まさか自分がなるなんて思ってもみなかった。
好きな女を抱くのって、こうして抱きしめてるだけでも、気持ちよいもんだ。それが全身で応えてくれるんだから、たまらないしとまらなくなってしまう。それが癒しになって活力にもなっているんだ。
だから、郁美から離れるなんて考えられない。」


「···」

「郁美…一緒になってくれる?
多分、子どもができてるから拒否できないと思うけど…」


私は、しばし言葉にできなかった。


「…私じゃ、悠の親御さんに反対される…」

やっと言葉にできたのは、返事じゃなかった。
ずっと思っていたことだった。






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