まるでペットのような彼
「一条さん。おはようございます。今日も満足感いっぱいですね。」

加藤さんの挨拶も相変わらずだ。

私は、職場での呼び名に旧姓をつかっている。
社外的な付き合いは、少ないのだが、式を挙げてないために認知が低いこともあり、役職上、混乱を少なくするためだ。

いまのところ、会社を辞めるつもりもなく、子どもができたなら、育児休暇をとろうと思っている。



そんな日常をひと月も過ごしていたところ、他の女性社員からの視線を感じるようになった。




加藤さんと社食に行って、日替わり定食を注文した。

「最近、噂されてますね。」
テーブルにつくと加藤さんからそう言われた。

「なんのこと?」

「一条さんのことですよ。」

「私?またなんかあったっけ?」

「またっていうか…」

珍しく加藤さんが、言い淀んでいる。

「言いにくいことなのかな?」

「そうですね。よい噂じゃないので…」

「気にしないから、言ってよいよ。そこまで言われたら、気になるしね。」

「そうですか?じゃあ言わせてもらいます。
一条さんの旦那さんが、ホストをしているって噂になってるんですよ。」

加藤さんの言葉を聞いて、どこから噂になったんだかとかも思ったが、ホストをしていたのは、事実。

「まぁ、ホントだよ。」

「えっ?そうなんですか?」

「うん。お店で知り合ったんだよ。」

「意外です。」

「やっぱり?私自身も意外だと思ってる。」
そう言って、私は、笑った。






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