例えば魔女と恋をして
すると、戸田先輩は視線を流しながら
「…さあ?噂通りに呪われてしまう人がいるのかもしれないよ?」と、曖昧な返事を返して笑い、その場を立ち去ろうとしたが、俺はそれでも先輩に食いついた。
「なんで、なんで先輩は大丈夫だったんですか?」
一瞬、振り返った先輩が口の方端を吊り上げて冷たい目で俺を見る。
「諦める強さが俺には…あったからじゃない?」
そういうと、スタスタと食堂から消えて行く。
諦める…強さ?
それが何を意味しているのか
俺には全く理解できなかった。
そしてもう一つ、新たに浮上した訳の分からない思い…。
戸田先輩が八神さんの素顔を知ってる。
そう聞いた瞬間。
課長と天使が2人でいるのを目撃したよりも、スゲー嫌な気分になったこと。
意味が分からない。
これじゃあまるで、俺が戸田先輩に嫉妬してるみたいじゃないか…。
頬杖をつき、溜め息とともに彼女を思い浮かべても…見えるのはあの黒いベールの姿だけ…。
顔も知らない相手に…
恋なんて…
できるかよ。