例えば魔女と恋をして


「素顔の写真くらい、いいじゃないですか?

掛けがかかってるんですよ」


掛け?

一体誰が…なんのために…⁈



顔を見られないように必死に床に這いつくばると、ふわりと

何かが私の頭を覆った


瞬時に香った暁君の匂い…。


「っなにしてんだよっ‼」

男の怒鳴り声が、暗がりの向こうで響き渡った時


もしかしたら、私を庇った暁君が殴られちゃうんじゃないかと思って


その瞬間


正体がどうとか


もう、そんなのどうでもよくなって、私は勢いよく、暁君の腕に捕まり、男に向かって泣きながら怒鳴り声をあげていた。



「私の大好きな人に手をださないでっっっっ‼」


騒動に周囲が静まり返ったまま、私たちを見ていた。



「や、八神さん…?」


「大丈夫…暁君は私が守るから」

泣きながら笑いかけると

不意に掴まれた手のひら

いつかのように

彼がまた

私をこの場から連れ去ろうと


私の手を引いて走り出した。




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