例えば魔女と恋をして


「何が好きなのか分からないけれど…差し入れです。」

そう言って差し出された温かいココアを受け取ると


どんどん奈落の底に突き落とされていくような

切なさと同時に

ほんわりと胸が温まるような矛盾で

涙腺が緩みそうになる。


「あ…ありがとう」


手のひらに丁度良い温もりのココアを

きゅっと握りしめる。


フったくせに

優しくなんかしないで欲しい。

そう思う気持ちと同時に

嬉しい。なんて思ってしまう私は…

つくづく暁君に惚れてしまっているんだと実感してしまう。


「ココア…好きなんだ。嬉しい。」

「それなら良かった。」


直接口をつけて飲むわけにはいかなくて…

引き出しからストローを取り出して飲むと


「温かい飲み物をストローで飲む人は初めて見た。」とくすくす笑われてしまって


それが恥ずかしい…。



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