例えば魔女と恋をして





ココア1つで喜ぶのを見て彼女も女の子なんだなーと思った。



まあ、声色は確かに喜んでいたはずだ。



…と、思いたい。



でもさすがに簡単にはベールを取らない。



ホットじゃないほうが良かったかな…なんて後から少し考えてしまった。




数日


なんとなく八神さんを目で追っていると、意外な一面によく出会う。



例えば

階段でつまづいたり。

ランチ時には食堂で女性社員と一緒に食事を楽しんでいたり


見た目の格好を取り除けば、彼女の生活は至って周りの女子とそう変わらない…


そう

変わらないんだ。



だから、余計に興味が湧いてしまう。


彼女がどうして顔を隠しているのか…。



「暁、どうした?」

「えっ⁉いや、なんでもないです‼」

「魔女のことでも見てたのかよ?お前、取り憑かれちまうぞ?」

同期の友達が蕎麦を啜りながら冷やかし半分に声をかけてきた。


「見てるわけねえだろっ!でもさ…矢田…

お前、本当に魔女だの呪いだの…

噂を信じてる?」


同じく蕎麦をすすりながら聞いた俺に、矢田は唸った。


「でもさ、確かにうちの会社には俺たちより何年か上の先輩達以降からの古株が少ないよな。


そして…噂を流してるのもまた、俺たちより何年か上の先輩達だ。

って事は本当なんじゃねえの?」

「まあ…そう聞く限りはな。


でもさ、「消える」ってなんだろ?」

そう聞く俺に矢田はもう一度、唸り声をあげた。



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