例えば魔女と恋をして
彼女がこちらを見ている…
きまずさで、体が動かなかった。
弁解の言葉も浮かばない。
頭の中が真っ白で、どうしていいのか分からなかった。
たくさんの野次が飛ぶ中
すっと立ち上がった彼女がつかつかと
小走りで俺のほうに歩み寄ると
俺の前でピタリと立ち止まった。
「八神さん…ごめんっ…俺…そんなつもりじゃ…」
謝りかけた時
彼女の右手が
勢いよく俺の頬に飛んできて
激しい音がバチンッッとなった。
あまりの突然の出来事と
頬の痛みとで
顔を上げることもできずにいると
視界に
綺麗な雨が零れていくのが見えて…
それがなんなのか
すぐに理解した俺は
彼女の手を掴んで
食堂から逃げ出した。