無愛想で糖度高めなカレの愛
もう閉まっている店も多いアーケードには、仕事帰りらしき人や、すでにできあがっているオジサマ達がちらほら行き交う。

その中をゆっくり歩きながら、私は考えを巡らせ、自分の気持ちを少しずつ吐き出す。


「……私、あの人がうちの会社に来た時、“もしまた好きになったらどうしよう”って一瞬考えた。未練はないと思ってたけど、それがただの思い込みだったってこともあるだろうし」


夕浬くんのことを好きになれると思った矢先に彼が現れて、気持ちが揺れてしまいそうで怖かった。

恵次に会うたびに、どうしても特別な目で見てしまうのは否めなかったから。


「でも、はっきりしたわ。私の中で、彼はもう完全に過去の人になってるって」


さっき恵次が言っていたことが本当で、まだ私に愛情があるとしても、私はもう彼になびいたりしない。それは自信を持って言える。

そう思えるようになったのは──


「夕浬くんのおかげよ」


私を見下ろす彼に、ふわりと微笑みかける。


「あなたが、私の記憶を上書きしてくれたから」


恵次のことを風化させるくらい、あなたへの強い愛情を持たせてくれたからだと思うの。

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