無愛想で糖度高めなカレの愛
嘘のように軽くなった足取りで大通りに出ると、タクシーにふたりで乗り込んだ。
車に揺られている間に自然と繋いでいた手は、夕浬くんのマンションに着いても、エレベーターの中でも離れることはなく。妙な緊張からか、私の口数も少なくなっていた。
部屋に入り鍵を閉めた途端、彼はドアを背にした私の横に手をつく。逃がさないよう閉じ込めた私を見つめて、形の良い口が開いた。
「はい。聞かせてください」
「えっ、ここで!?」
玄関でさっきの続きを言えと?と、目を丸くする私。
せめて靴を脱いで部屋に上がってから……なんて考えていると、彼の眼鏡がきらりと光る。
「これでも我慢したんですけど」
「う……」
無表情のせいか、拒否する気を起こさせない。意外とせっかちなところもあるのね……。
でも、これまで待たせてしまっていたのだ。私も早く気持ちを伝えなければ。
十数センチの距離にある彼の瞳を見つめ、激しさを増す鼓動を必死に宥めながら、息を吸い込んだ。
「私……夕浬くんのこと、好きになった。すごく」
ちゃんと“好き”と口にしたら、身体の芯が優しい光に包まれるような温かい感覚がした。
目の前の綺麗な顔も、緊張が解けたように柔らかくなる。