無愛想で糖度高めなカレの愛
夕浬くんは真顔で、「どこかにウケる要素ありました?」なんて言うから、それもまた面白くて。

私は謝りながらなんとか笑いを止め、再び乙女心を説く。


「たぶん、彼女は単にどっちが大事かを聞きたかったわけじゃなくて、自分の扱いがおろそかになってるってことを訴えたかったのよ。女はこう、“言葉の裏にある本当の気持ちを察してほしい”って思っちゃう生き物だから」


言わなくてもわかってほしいっていう、ワガママで面倒臭い気持ちは、多くの女子が持つものだと思う。

私だって、いざ自分が元カノさんの立場になったら、同じことを思うかもしれない。

夕浬くんはやっぱり無愛想なままだけれど、感心するように頷く。


「明穂さん、恋愛セミナー開けそうですね」

「あはは。夕浬くんにはたくさん教えられそう」


たいした恋愛はしてきていないけど、と思いながら笑っていると、彼は少し真面目な表情になって、目線を遠くにさ迷わせる。


「……あの時は、別れを切り出されても引き止める気にならなかった。今思えば、あんな希薄な想いは恋とは言えないなと」


前髪が降りかかる瞳が私を捉え、愛でるような眼差しで包み込む。

< 109 / 215 >

この作品をシェア

pagetop