無愛想で糖度高めなカレの愛
入社して二年は工場勤務を経験し、私が開発課に配属されたのは四年前。その頃、つまり河瀬くんが入社する前にいた前任の室長は、頭ごなしに“そんな開発はできない”と否定する人だった。
まだ開発の仕事についていくのがやっとだった私には、思うように自分の意見を言えなかったけれど、悔しそうにする先輩や篠沢課長の姿を見てきた。
だから、河瀬くんのような人はとても貴重だと思うのだ。
話しているうちに、開発課のオフィスを通り過ぎて階段の前にやってきていた。研究室はこの下の一階にある。
いつか言おうと思っていたことを伝えられて満足した私は、黙ったままの彼に笑顔を向ける。
「じゃあ、研究頑張ってね」
オフィスに戻るため、軽く手を上げてコツンとパンプスの音を廊下に響かせた瞬間。
ぐっ、と手首を掴まれて、足が止まった。
驚いて振り向くと、会議の時のように真剣な色をした、眼鏡の奥の瞳と視線がぶつかる。
「河瀬くん……?」
不思議そうにする私を見据え、彼の唇がゆっくり開き、こんな言葉を紡いだ。
「僕が開発研究に熱心になれるのは、間宮さんのおかげでもありますよ」
「私の?」
首をかしげる私を映す瞳が、少しだけ細められる。
「あなたの、喜ぶ顔が見たいからです」
──トクン、と胸が小さく鳴った。そんな理由だなんて予想外すぎて。
ていうか……それ、本当?
まだ開発の仕事についていくのがやっとだった私には、思うように自分の意見を言えなかったけれど、悔しそうにする先輩や篠沢課長の姿を見てきた。
だから、河瀬くんのような人はとても貴重だと思うのだ。
話しているうちに、開発課のオフィスを通り過ぎて階段の前にやってきていた。研究室はこの下の一階にある。
いつか言おうと思っていたことを伝えられて満足した私は、黙ったままの彼に笑顔を向ける。
「じゃあ、研究頑張ってね」
オフィスに戻るため、軽く手を上げてコツンとパンプスの音を廊下に響かせた瞬間。
ぐっ、と手首を掴まれて、足が止まった。
驚いて振り向くと、会議の時のように真剣な色をした、眼鏡の奥の瞳と視線がぶつかる。
「河瀬くん……?」
不思議そうにする私を見据え、彼の唇がゆっくり開き、こんな言葉を紡いだ。
「僕が開発研究に熱心になれるのは、間宮さんのおかげでもありますよ」
「私の?」
首をかしげる私を映す瞳が、少しだけ細められる。
「あなたの、喜ぶ顔が見たいからです」
──トクン、と胸が小さく鳴った。そんな理由だなんて予想外すぎて。
ていうか……それ、本当?