無愛想で糖度高めなカレの愛

ひとりで過ごすだろうと思っていたクリスマスは、夕浬くんと素敵な思い出を作ることができた。

年末年始は、毎年沙織と実家に帰ることになっているから、連休中に夕浬くんと会えたのは一日だけ。それでも、いつもより幸せな新年の始まりを感じていた。


休みが明けて数日、いよいよ発売が間近に迫るバレンタイン商品の追い込みをかけている。

中身もパッケージも、例年以上に気合いが入っているため、商品を置かせてもらう店舗や消費者の反応が気になるところ。

なんだかそわそわした気分でデスクワークをしていると、篠沢課長から「誰か手が空く人、会議の資料を運んでおいてくれる?」と声が掛かった。

たまたまキリのいいところで終わらせられた私が引き受け、課長から資料を受け取ると、さっそく会議室へと向かう。


まだ誰もいない空間で、ミーティングテーブルの上に資料を置いていると、ガチャリとドアが開く音がした。

顔を上げた私は、ドキリとしてあからさまに目を逸らしてしまう。


「あぁ、明穂」

「……お疲れ様です」


相変わらず他人行儀な挨拶をする私に、スーツのポケットに片手を入れた恵次が悠然と近付いてくる。

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