無愛想で糖度高めなカレの愛
ぽかんと目と口を開けたまま固まっていると、河瀬くんは手を離し、腕を組みながら言う。


「企画が通った時の間宮さん、すごくいい顔をするんで」

「そう、かな……」


これって褒められてるよね? なんか照れる……。

掴まれていた手首と、頬がほんのり熱を持つ。

すると、相変わらず無表情の河瀬くんはこんなことを口にした。


「口角の上がり方や頬の紅潮具合、表情筋の緩み方が、間宮さんは人一倍わかりやすいので興味深いんです」


…………はい?

期待していた甘い言葉とは違う、何かのデータを挙げるような言い方をされた私は、今きっとマヌケ面になっているはず。

なんだかよくわからないけど、視点が独特……。


「……それって、私を研究対象か何かにしてる?」

「まぁ、研究対象といえばそうなのかもしれませんね」


そうなの!? 冗談のつもりで聞いたのに!

微妙な顔をしていると、彼は眼鏡を押し上げながらこんなことを口にする。


「こんなに感情豊かで魅力的な女性は、僕の周りには間宮さん以外にいませんから」

「へ……?」


再び甘さを感じる言葉を投げ掛けられて、私は目をぱちくりさせる。

河瀬くんは特に表情を変えることなく、階段を一段降りようとして、顔だけこちらに向けた。

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