無愛想で糖度高めなカレの愛
私が差し出したものは、わが社のチョコレートの特徴を可愛いイラスト付きで描いた用紙。

形はA3サイズのポスターのようなものと、ふきだしのように縁取ったポップを用意してみた。どちらも、もう少し丈夫な作りにすればこのまま飾れそう。

これを描いたのは、他でもない沙織。今度レストランのビュッフェをおごるという交換条件で、私の頼み事を引き受けてくれたのだ。

これを見た恵次は、目新しいのか目を丸くしている。


「……手作りのポップ? すごいな、誰が描いたんだ?」

「私の妹。どう、上手でしょ?」

「あぁ、沙織ちゃんか。そりゃ明穂にはこんな絵心ないもんな」


何気なく失礼な発言をされてカチンと来るも、恵次は私を気にすることなく、沙織が描いたポップに見入っている。

感嘆の声を漏らす彼にクスッと笑い、私も隣から覗き込みながら、これを作った目的を話す。


「手作りって、やっぱり心が伝わるじゃないですか。手書きで楠木百貨店の名前を書くだけでも、そのお店のために用意したって誠意を見せられると思う。“これだけ私達はあなた方に信頼を寄せてるんです”って、アピールになるかもしれない」

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