無愛想で糖度高めなカレの愛
紙には商品のことだけでなく、楠木百貨店の名前やキャッチフレーズも入れてある。

私達の社内にもこれを貼れば、“楠木百貨店に行こうかな”という気になってくれる人もいるかもしれない。

ウチとの商談はお互いにメリットがあるのだということを、少しはこれで示すことができるのではないかと考えたのだ。


「これでも向こうが渋ってたら、最後の一押しは、“私達も催事場作りの手伝いをします! 雑用も何でもこなします!”でオッケーよ」


ガッツポーズをして開き直ったように言うと、一瞬目を点にしていた恵次が、ぶっと吹き出した。

はははっ!と声を上げて笑う彼を久々に見て、私はキョトンとする。


「さすが開発課の熱血漢。そこまでしようとは思ってなかったわ」

「熱血漢?」


微妙な呼び名に顔を歪ませる私。

恵次はおかしそうにククッと笑うと、もう一度ポップに目を落として真面目に言う。


「……そうだな。商談で勝つには細かなデータや良い資料を提示するだけじゃなくて、誠意が感じられるかどうかも重要だ。心がこもってなきゃ、信頼関係は築けないからな」


彼の中でも何かが見えてきたのか、表情がどんどん頼もしさを増していく。

少しは役に立つことができたかなと、私も安堵の笑みが自然と生まれていた。

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