無愛想で糖度高めなカレの愛

初めて味覚に違和感を覚えたのは、三年前、恵次と付き合って半年ほどが経った時。

あの時は甘いもの自体を食べたいと思わなかったし、酷い時は風邪をひいた時のように食べ物の味がわからなかった。今より重症だったことは確実だ。

それが、恵次と別れてから驚くほど症状は良くなり、きっと精神的なものだと思っていた。あの頃はいろいろと我慢していたから、ストレスで不調だったのだろうと。


しかし、特別なストレスを感じていないはずの今、また起こってしまったのだ。

まさか、沙織が持ってきたお菓子を食べたいと思わなかった時から、異変は起こっていたのだろうか。最近、食欲が湧かない時もよくあるし……。

いったいどうしてなのか、原因がまったくわからない。

でも、ただ今日が不調だっただけで、そんなに悩むことではないかもしれない。

きっと大丈夫。変なのは今日だけだ。大丈夫──。



「明穂さん」


食器を洗いながらぼうっと考えていると、後ろから腰に腕が回され、耳元で心地良い声が響いた。

仕事終わりに寄った夕浬くんの部屋で、さっき一緒に作った料理を食べ終えたところ。

甘えるように肩に顎を乗せられ、くすぐったさと彼の可愛らしさで笑みがこぼれる。

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