無愛想で糖度高めなカレの愛

二月ニ日、仕事を終えてから、美結ちゃんと一緒に楠木百貨店に来ていた。

まだ開催されたばかりのバレンタインコーナーには、赤やピンクを主体にきらびやかな装飾が施され、たくさんのチョコレートの箱が並んでいる。

午後六時半の売り場には、まだバレンタインまで日にちがあるものの、多くの女性客が足を止めていた。


「あ~どれも可愛いし美味しそうだし迷っちゃう!」

「ほんと毎年思うことだけど、これだけ種類がある中で選ぶの大変だよね」


目をキラキラさせる美結ちゃんと、軽くため息を吐く私。

選ぶのも大変だけど、売る方も同じだ。これだけの種類の中から、自分達が作った商品を買ってもらわなくてはいけないのだから。

ディスプレイを見ながらゆっくり歩いていると、美結ちゃんが「あ!」と声を上げて、斜め前を指差した。


「ウチの商品、ちゃんと飾られてますよ! しかも結構目立つ」

「ほんとだ。いい感じ」


少し離れたところからも、“県内唯一のチョコレート工場”という文字が見える。近付いてみると、沙織に描いてもらったポップもしっかりと飾られ、商品を置くスペースも十分に取ってくれていた。

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