無愛想で糖度高めなカレの愛
少し観察しただけでも、ウチの商品の前でじっくり見てくれる人が何人もいる。

美結ちゃんと顔を見合わせて笑顔を浮かべながら、どうかひとりでも多くの人が、このチョコレートを手に取ってくれますように……と願った。


一通り見て回ると、やっぱりチョコはバレンタイン直前に買うことにしたらしい美結ちゃんが、腰に手をあててこんなことを言う。


「さーて、市場調査はこれくらいにして。先輩、何か食べたいものとか欲しいものありますか?」

「えっ?」


何で突然そんな質問を?

首をかしげる私に、美結ちゃんはにっこりと可愛らしい笑みを浮かべる。


「明日、先輩の誕生日でしょ。何かプレゼントさせてください!」


──誕生日。そうだった、もう明日だ。

いつも当日にならないと誕生日のことを忘れている私。それを美結ちゃんが覚えていて、しかもお祝いしようとしてくれていることが嬉しくて、口元が緩む。


「よく覚えてたね」

「節分の日だから覚えやすいんですよ~。明日はきっと彼と過ごすだろうから、あえて今日ここに来たんです」


得意げな顔をする彼女だけれど、その一言に私は苦笑した。

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