無愛想で糖度高めなカレの愛
キッチンの小窓に置かれた小さな時計を見ると、まだ六時半。

もう沙織が帰ってきたのかな……いやいや、それなら鍵を持っているんだから、インターホンは鳴らさないでしょ。

……まさかピザ屋さん? もう来たの!?

時間間違えたのかな、なんて思いながらモニターを見に行くと──そこに映し出されたのは、まったくもって予想しない人物。


「な、何で……?」


チャコールグレーのコートに身を包んだその人は、仕事帰りなのだろう恵次だ。

驚きと困惑でぱかっと口を開けたまま固まっていた私は、もう一度インターホンを鳴らされて、ようやく応答のボタンを押した。


『やっと出たか』

「恵次……どうしたの!? 何でこんなとこに……」

『用件があったんだけど、開発に行ったら“間宮はもう帰った”って言われたからさ』


用件があって開発に? それで家にまで来るということは、まさか仕事で何か落ち度があったとか?

咄嗟にそう考えた私は、「今出るから!」と言って、慌てて玄関へと向かった。サンダルを突っかけ、勢い良くドアを開ける。


「ごめん、恵次! 用件って──」


そこまで言って、口をつぐんだ。

私の目の前に、可愛くラッピングされた箱のようなものが飛び込んできたから。

< 139 / 215 >

この作品をシェア

pagetop