無愛想で糖度高めなカレの愛
●ガナッシュは危険な香り
あっという間に会議から二週間ほどが経ち、街中ではクリスマスムードが漂い始めている。
フリーの私は浮かれたくても浮かれられず、相変わらず日々の仕事に精を出すだけ。
今日もミモレ丈のスカートを履いた足をひざ掛けで覆い、窓を背にして自分のデスクに座っていた。
向かい合って設置されたデスクが四台連なっている島が二つあり、私から見て右側には広報課のオフィスがある。パーティションで仕切られただけで、フロアは同じなのだ。
この会社のオフィスは、一階が総務課と営業課、二階が広報課と開発課、というように別れている。ここで働く社員は、工場勤務の人を除けば百名ほどだろうか。
併設されている工場は、オフィスが入っている棟の二倍以上はある大きさで、そこと繋がっているのは一階にある連絡通路だけだ。
この通路のすぐそばにある研究室では、今日も河瀬くん達が研究に勤しんでいることだろう。
そういえばバレンタイン用の試作品、まだ改善しなきゃいけないけど、ちゃんと中にとろけるチョコレートソースが入っていて驚いたな。
やっぱり河瀬くん達の技術ってすごいよね……。
昨日食べた試作品の味や触感を思い出しながらパソコンに向かっていると、前方のドアからオフィスに入ってきた篠沢課長が、そのまま私のもとへやってきた。
彼女ご自慢のストレートロングの黒髪は、今日も後ろでひとつに結ばれている。