無愛想で糖度高めなカレの愛
「誕生日おめでとう」


落ち着いた笑みを浮かべて言う彼に、私はぽかんとしたマヌケ面を見せる。


「え……えっ? 用件って、仕事のことじゃなかったの……?」

「仕事じゃないけど、これも立派な用件だろ」


恵次はクスッと笑い、私の手を取ってプレゼントを握らせる。


「ほんの気持ちだけど。受け取ってくれよ」

「あ、ありがとう……」


なんか流れで受け取っちゃったけど、いいのかな……。両手で持ったおしゃれな小花柄の包装を見下ろし、複雑な気分になる。

まさか、恵次が私の誕生日を覚えているとは思わなかった。付き合っている時に祝ってもらったことはあるけど、一回だけだったし。しかも、こんなプレゼントまで用意してくれていたなんて。

でも、嬉しいけれど、やっぱり素直には喜べない。喜んではいけない気がする。


「少し話せないか?」


目線を落としていた私に、彼が声を掛けた。

なんだかあまり良い予感がしなくて、わずかに身を引いて警戒する。


「……何」

「ここじゃ寒いだろ。中入れてくれる?」

「絶対ダメ!」


何さらっと部屋に上がろうとしてんのよ。下心見え見えの男を、女ひとりの部屋に上がらせるわけないでしょーに!

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