無愛想で糖度高めなカレの愛
「でも、俺が女とふたりでホテルに入っていくのを見たってお前が言ってた件、あれは本当に誤解なんだ」

「……え?」


思ってもみなかったことを言われ、私は涙を引っ込めて恵次を見やる。


「男友達と飲んでたら、そいつらが途中で女子を呼び出して。その中のひとりだったあの子が、酔っ払って俺に絡むから、ホテルまで連れていってやっただけ。何も手は出してないよ」


そう言って、私を見る瞳と視線が絡まった。

嘘をついているように見え……ないこともないけど、にわかには信じがたい。後からなら何とでも言えるのだし。


「そんなの、信じられるわけないじゃない……」

「信じてほしいとは思ってないよ。ただ、本当のことを言っておきたかっただけ」


またしても自己中発言をするこの男。それでも何故か憎めないのは、飄々とした性格のせいか、私に彼への情があるからだろうか。

とにかく、真実がどうだったかは、恵次とあの子しか知らないし、今となってはどうでもいいこと。

でも、ひとつだけ疑問が湧く。


「じゃあ、どうして別れ話をした時にそう言ってくれなかったの? 恵次は何も言い訳しなかった。だからきっと、私のことも遊びだったんだなって……」

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