無愛想で糖度高めなカレの愛
あなたは変わった。もっと優しくなったよ。

自己中で、勝手で、私の気持ちなんて全然わかってない。そう思っていたけど、今はちゃんといろいろなことを考えて、反省もしてくれているから。

けれど、私達のかけがえのない思い出は変わらない。

彼への恋心は無駄だったように思えた時もあったけど、十年近くも前の、私にとっては大切な出来事を彼も覚えてくれていただけで、すごく救われた気がした。


「恵次……本当にありがとう」


私は鍵を受け取り、頭を下げて微笑む。三年前には言えなかった、たくさんの感謝も込めて。

こちらに向かってやってきた車のライトに照らされた恵次の顔が、一瞬寂しそうに見えた。その瞬間。


「わっ!?」


ぐいっと腕を引かれて、彼の胸に飛び込んでしまった。

さらに強く香るバニラが私を包み込み、目を見開いて抵抗しようとする。


「ちょっ、何す──!」

「挨拶のハグだよ。……これで、きっちり終わらせる」


耳元で響く声は切なげに聞こえて、私はもがくのをやめた。

そしてすぐに身体を離されると、恵次はいつもの余裕はなさそうな笑みを見せて、運転席へと戻っていく。


「じゃあ、また会社で。間宮さん」


車に乗り込む前にそう言われ、私達はこれで本当に終われたのだと思った。

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