無愛想で糖度高めなカレの愛
「間宮さん、パッケージの変更の件、先方に伝えといてくれたかしら?」


今は無人の向かい合ったデスクの後ろから、長い前髪を耳に掛ける彼女が問い掛けた。

私はニッと笑い、親指と人差し指をくっつけてOKのサインを作ってみせる。


「バッチリです。新しいデザインは今週中に送ってもらうようにお願いしました」

「そう、ありがとう。あと消費者調査のデータは……」

「ここにまとめてあります」


腰を上げて、デスクの上に置いておいたファイルを差し出すと、課長は奥二重の瞳と薄めの唇をぱかっと開ける。


「あら~仕事が早いじゃない! どんな風の吹き回し?」

「失礼な」


私、いつもそんなにやること遅くないと思うんですけど。

ピクッと口の端をヒクつかせて歪んだ笑みを浮かべる私と、あっはっはと笑う課長。


「ごめんごめん、冗談よ! はい、お詫びにコレあげるわ」


ファイルと交換で渡されたものは、個包装されたおせんべいが二枚。

有名なテーマパークのキャラクターが描かれた、お土産らしきそれを見て、私は目を丸くした。これこそどんな風の吹き回しですか、と言いたくなる。

だって篠沢課長がくれるものと言ったら、いつも甘いお菓子だから。

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