無愛想で糖度高めなカレの愛
ありがとう、と再び心の中で言いながら、テールランプが見えなくなるまで見送った。

……よかった。これで私達は本当の意味で同僚になれる。夕浬くんのことも安心させてあげられるかな。

そんなことを考えながら、白い息を夜空に上らせてアパートの中へ戻ろうとした、その時。


「……明穂さん」


突然、聞こえるはずのない声が夜の闇に響き渡る。

驚いてバッと振り向くと、感情を読み取ることができない夕浬くんがアパートの駐車場にいて、私はこれでもかというくらい目を見開いた。


「夕浬くん、何で……!?」


ここにいることが信じられなくて、幽霊を見るような目で見てしまう。そんな私に、長い足を数歩進めて無言で近付く彼は、持っていた紙袋を差し出してきた。


「誕生日、おめでとうございます」

「えっ!?」


思わず叫んでしまった。

だって、誕生日を覚えていたとしても、プレゼントまで用意してくれているとは思わなかったから。


「あ、ありがとう……!」


驚きっぱなしの私は、胸をドキドキと高鳴らせて紙袋を受け取る。夕浬くんがこんなサプライズをしてくれるなんて!と、感動しながら目線を上げた。

しかし、彼の顔に笑顔はなく、浮かない表情をしている。

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