無愛想で糖度高めなカレの愛
「驚くかなと思って、内緒でこれを届けに来たけど……慣れないことはするものじゃないな」
「え?」
瞼を伏せて独り言みたいに呟いた彼は、そのまま私と目を合わさずに、重く温度のない声色で言う。
「手塚さんと会っているとは思わなかったんで」
──一瞬、呼吸が止まる。
冷たい手で心臓をわし掴みにされたような感覚がした。少しでも浮かれてしまった自分がひどく滑稽に思える。
夕浬くんの後方には、空いている駐車スペースに見慣れた黒い車が停められている。さっきこちらに来たのが彼の車だったのだと、どうしてすぐに気付かなかったのだろう。
彼は、私が恵次に抱きしめられた場面を見ていたのだ。
早く誤解を解かないと、と焦って口を開く。
「ごめんね、夕浬くん……! でも、あれは恵次が──」
「明穂さん、俺に何か隠してますよね」
少しだけ眉根を寄せた彼が、言い訳なんて聞きたくないとでも言うように私の言葉を遮った。その確信しているような口ぶりにも、ギクリとしてしまう。
夕浬くんに隠していることは、ただひとつ──チョコレートを美味しいと思えなくなってしまっている、原因不明のあの件だ。
「え?」
瞼を伏せて独り言みたいに呟いた彼は、そのまま私と目を合わさずに、重く温度のない声色で言う。
「手塚さんと会っているとは思わなかったんで」
──一瞬、呼吸が止まる。
冷たい手で心臓をわし掴みにされたような感覚がした。少しでも浮かれてしまった自分がひどく滑稽に思える。
夕浬くんの後方には、空いている駐車スペースに見慣れた黒い車が停められている。さっきこちらに来たのが彼の車だったのだと、どうしてすぐに気付かなかったのだろう。
彼は、私が恵次に抱きしめられた場面を見ていたのだ。
早く誤解を解かないと、と焦って口を開く。
「ごめんね、夕浬くん……! でも、あれは恵次が──」
「明穂さん、俺に何か隠してますよね」
少しだけ眉根を寄せた彼が、言い訳なんて聞きたくないとでも言うように私の言葉を遮った。その確信しているような口ぶりにも、ギクリとしてしまう。
夕浬くんに隠していることは、ただひとつ──チョコレートを美味しいと思えなくなってしまっている、原因不明のあの件だ。