無愛想で糖度高めなカレの愛
否定も肯定もせずに、私は急激に渇いていく喉から声を絞り出す。


「な、何で……?」

「ここ最近、何か悩んでるような暗い顔してる時があるから、気になってました」


夕浬くん、とっくに気付いていたんだね……。

でも、考えてみれば当然だ。観察力が鋭い彼だもの、私の様子に気付かないはずがない。

シラを切るのは無駄だろうと、私は何も言わずに、真っ黒な地面に目線を落とした。


「俺にも言えないことなんですか?」


いつも、表情にも声にも感情を乗せない夕浬くんが、憤りを抑えるようにぐっと手を握りしめて言う。

どうしよう……正直に言ってしまおうか。

きっとその方がいいということはわかっている。けれど、仕事に関わる大事なことを今まで隠していたと知ったら、彼はどう思うだろう。


仕事に関しては妥協を許さない。そんな彼が、業務に支障をきたすかもしれないのに、何の対処もせず逃げてばかりいる私に呆れるのは当然だ。

軽蔑されたくない。生半可な気持ちで仕事していたと思われたくない──。

そんな臆病な気持ちが、本当のことを心の中に隠したままにしてしまう。

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