無愛想で糖度高めなカレの愛
踵を返す彼の腕に、私は咄嗟にしがみついて引き止める。けれど、見上げた横顔は怖いくらいの冷たい無表情で、それ以上の言葉を続けることができない。

自然と力を弱めてしまった私の手を、夕浬くんは自分の腕からそっと離す。


「……今の俺は、冷静に話を聞く自信がない。誕生日も……祝ってあげることができなくて、すみません」


無表情だけれど、声には悲しさと申し訳なさが入り混じっているのがわかって、罪悪感で押し潰されそうになる。

夕浬くんは何も悪くない。謝らなければいけないのは、彼を傷付けてしまった私の方なのに……。

地面に視線を落としたまま足早に車へと戻っていく彼を、もう追うことはできなかった。


彼の車が去っていき、静寂に包まれた夜空の下をふらりと歩き出す。放心状態のまま階段を上がり、鍵を開けようとして紙袋を持っていたことに気付く。

わざわざ持ってきてくれたのに、彼の好意を私が台無しにしてしまった。

じわりと瞳に浮かぶモノのせいでぼやける視界の中、のっそりと部屋に上がる。自分の部屋に入ってぺたんと力無くカーペットの上に座ると、ガサガサと音を立ててゆっくり紙袋から中身を取り出した。

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